Marguerite (WE)
2008年 07月 18日
キャストは、
Marguerite・・ Ruthie Henshall
Armand・・Julian Ovenden
Otto・・Alexander Hanson
Lucien・・Simon Thomas
Annette・・ Annalene Beechey
Pierrot・・ Matt Cross
Georges・・ Andrew C Wadsworth
Chanteuse・・Gay Soper
Hermann・・Keiron Crook
スタッフは、
Directed by Jonathan Kent
Music ・・Michel Legrand
Book・・Alain Boublil, Claude-Michel Schönberg and Jonathan Kent
Lyrics・・ Herbert Kretzmer
Designer・・Paul Brown
Lighting Designer・・ Mark Henderson
ネタばれ注意です。
TKTSで半額チケットを購入して見ました。
これは、ちょっとイマイチでした。せっかく良い出演者なのに、なんだかもったいない・・。そういう意味で、以前「The Far Pavillions」(全然違う作品ではありますが)を見た時と似たような感想を持ちました。
原作も良いんだし、時代設定の変更などの脚色の着想自体もそう悪くなさそうなのに、ツメが甘いというか、なんだか上手くいっていません。話の展開が隙だらけというか、ユルいというか・・。脚本をもう少し改良したら、もうちょっと良くなるような気がするんですが・・。
出演者、特に主人公を演じる二人は頑張っていましたし、上手でした。良かったと思います。だけど、話の展開が強引というかやや無理があったり、矛盾というか説明不足だったり、駆け足気味すぎたり、どこかでみたような・・という場面だったりで、なんだかチャチな感じも・・。
年の差カップルの不倫(?)も、レジスタンス絡みの部分も、さほどドラマチックに盛り上がるわけでもない。なんだかな~、もうちょっとやりようがありそうな・・と惜しかった。
それと、マルグリットがパリ解放後ドイツ人と寝た女ということで群集にリンチされるというラスト近くの場面が、個人的にちょっと・・・。嫌でした。小学校の頃だったか、確か「ライアンの娘」という映画だったと思うんですが、これと似たような(この映画の場合は英国とアイルランドだったと思いますが)場面をTVで見て、嫌な気分がした記憶があります。ディスカバリーチャンネルのドキュメンタリーだの、数年前に見たオランダ映画などでもこういう場面を見ましたが、やはりなんとも嫌な気分がするんですよね。人間の嫌~な面というか、残酷な面を見せ付けられるような気がして。
舞台装置は良いと思います。マルグリットが暮らすパリの豪華なフラットのセット、洗練されていて、美しいです。アルマンの部屋も、ラ・ボエーム風というか、いかにも戦前のパリのビンボー芸術家が住む、最上階というか屋根裏部屋という感じで、よかったです。
衣装もきれいでした。
ミュージカルナンバーは、悪くは無いのですけれど、なぜかあまり印象に残りませんでした。主人公二人の恋愛感情絡みの曲は耳に心地よく美しいタイプの、いかにもミュージカルという感じの曲でした。ジャズっぽい曲やシャンソン風の曲などもありましたね。Chanteuseが2幕で歌う、シャンソンっぽい曲はピアフ風?で雰囲気があって良かったかな。あと、マルグリットの歌う、彼女が若いときのヒット曲という設定のChina dollという曲もフランスっぽい雰囲気があって良かった。
ストーリー展開で一番気になった部分は、マルグリットがなぜ死んだのかわからなかったこと。唐突に死んじゃったような印象です。これ、私が単純にセリフや歌詞を聞き取り逃してわからなかっただけ、なのかもしれませんが・・。でも、終演後、「なんでマルグリットは死んだわけ??」と言ってるお客さんを複数目撃。英語を話す人でも死因を把握しそこねたってことは、やはりわかりにくいということなんでしょう。リンチが直接の原因で外傷性のショックとかで絶命したのでしょうか?う~ん、殴られてはいたけど、そこまで「暴力」としては激しくはなかったような。それとも、原作のように結核にかかっていて、戦後の物資不足の中亡くなったということなんでしょうか??そういえば、新年パーティーに行く時、具合が悪いから行きたくないとオットーに言ってたような。
いや、別にはっきり死の理由が説明されていなくても、なんとなく演出や勢いで疑問を持たせないようになってればOKだと思うんですが、今回は、あれっ、いきなり死んじゃうの??という印象でした。
あと、マルグリットとアルマンが恋に落ちる過程も、なんか説得力不足。アルマン役のJulian Ovendenさんの熱い(?)芝居と魅力のおかげで、なんとかストーリーが成立している印象。マルグリットが若い頃、赤十字のなんかで歌った時、子供だったアルマンがピアノの譜めくりをしていて彼女に魅せられたという設定らしく、で、マルグリットの40歳の誕生パーティーのさなかの空襲警報で、客がみな防空壕?に避難したのに、マルグリットとアルマンは部屋に残留、で、爆弾が落ちて、フラットの大きな窓が割れると同時に二人がキスすると言う展開なんですが、なんかこのへんが無理矢理気味。マルグリットがアルマンにはまっていく過程もあんまり説得力がなかったような気がする。
年越しパーティーで、アルマンがオットーを暗殺する場面なども、ちょっとチャチな感じでした。あと、アルマン君、君がオットーを殺したらマルグリットは完全に路頭に迷うじゃないか、マルグリットに遊ばれて捨てられたと思ったにしろ、オットーが姉の仇だとしても、そりゃないよ・・、と思ってしまった。
その他の場面でも、アルマンの行動にイライラ(笑)。あなたね~、女性と会うよりナチスから逃げるほうを優先しなさいよ、お姉さんとその彼氏にだって迷惑がかかるんだから!!!と(笑)。
MargueriteのRuthie Henshall、ちょっと冷たい洗練された雰囲気で美しかったです。 1幕のパーティーのシーンの、赤いドレス姿、とてもきれいでした。
歌、相変わらず素晴らしいですね。この役、下手したら演じ方によっては観客から同情をまったくされない可能性もあると思うんですが、彼女が、か弱いというか、はかない感じも出して演じていたので、なんとか最後のマルグリットの死の場面で観客の同情を得ることに成功していたような気もします。あと、あの~、2幕の最後のほうの、リンチを受ける場面で・・、”事故”があったような・・。それとも演出だったのかしら・・。
Armand役のJulian Ovenden、この人がこの公演では一番目立っていたかも。とても良い声で、ドラマチックに歌います。ルックスも、ちょっとぽてっとした唇が魅力的なハンサムで、年上の女性を魅了する役に合っていたと思います。一途な感じも出ていて、よかったです。ピアノもご自分で弾いていらっしゃったように見えたのですが、どうなんでしょう?
OttoのAlexander Hansonさん。ん、あんまりナチスの軍人ぽくないような。四角四面な感じはあるのですが。 私が、あっ、トラップ大佐じゃない!と気付いてしまったのがいけないのかもしれませんが。劇評などでは、彼の芝居を褒めているものが多かったのですが、私が見た公演では、それほどOttoの屈折した感情をみごとに表現・・とまではいかなかった。
あと、原作だと、確か ヒロインが彼氏の父に懇願されて、彼氏の将来のために泣く泣く身を引く、という話だったと思うのですが、このミュージカルだとアルマンのお姉さん(レジスタンス)がナチスに捕らえられて、彼女への拷問をやめさせるのとアルマンの逮捕をやめるのと引き換えに、アルマンへ「あんたとは遊びだったのよ、さよなら~」的な手紙を書け、とオットーがマルグリットに強要すると言う展開。これ、似ているようで、なんだかヒロインの行動に対する印象がだいぶ違うんですよね。原作だと、ヒロインが犠牲を払うさまが観客の同情を呼ぶが、ミュージカル版の展開だと、ここにいたるまでの経緯(マルグリットに会う為に、アルマンはお姉さんたちとのパリ脱出の待ち合わせをすっぽかした。お姉さんは、ナチス将校の女と不倫中の弟に危険が迫ったのを弟のアパートに知らせに来てナチスに捕まる)もあり、なぜかさほど同情を呼ばないように感じた(これって私だけ??)。
という感じで、悪くは無いのですが、なんだか未完成品を見ているような感じもある、ちょっと中途半端な印象の舞台でした。
2幕の最後の、群集にマルグリットが襲われる場面で、アンサンブルの人が彼女の服を破るんですが、その時に、はずみで下に着ているスリップの肩紐が大きくずれてしまったのか、切れてしまったのか、それとも元々そういう演出なのかよくわからないのですが、ヘンシェルさんの右胸がちらっと見えちゃった!
すぐ手でスリップの胸元をおさえていたし、そのあとの場面、ずっと前胸部が観客側に来ないような姿勢で演じていらっしゃったようなので、もしかしたら事故なのかしら・・。