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ミュージカル(国内、ブロードウェイ、ロンドン、)海外ドラマ、映画について。最近、韓国ミュージカルにも目覚めました。


by saffy114
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nine<나인>  韓国版  (1)

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「nine<나인>」。ソウルのLG아트센터 <LGアートセンター>にて、2月6日、15時からの公演を見ました。

キャストは、
Guido Contini 황정민<ファン・ジョンミン>
Luisa 김선영<キム・ソニョン>
Carla 정선아<チョン・ソナ>
Claudia 양소민<ヤン・ソミン>
Liliane La Fleur 문희경<ムン・ヒギョン>
Guido's mother 홍윤희<ホン・ユンヒ>
Saraghina 오은미 <オ・ウンミ>
Our lady of the spa 장선유<チャン・ソンユ>
Stephanie Necrophorus 홍금단<ホン・クムタン>
Lina Darling 배민정 <ベ・ミンジョン>
Little Guido 김지환 <キム・ジファン>←たぶん・・。
アンサンブル 최경락/김미정/장은숙/황은수/이선영/양보미

演出・振付:David Swan
音楽監督:원미솔
Book:Arthur Lee Kopit
Music and lyrics: Maury Yeston
Book translation:박천휘/이수진
Lyrics translation:박천휘

主人公のグイド役はダブルキャストです。まず映画スターのファン・ジョンミンさんのグイドを見てきました。あ、リトル・グイドもダブルキャストです。私が見たのは、おそらくジファン君のほうだと思います。

数年前、日本でもこの作品、上演されましたよね。日本版は2003 Broadway revival と同じくDavid Leveaux演出で、BWリバイバルとほぼ同様の演出・舞台装置だったようですが(私はBWリバイバルは画像で一部見ただけなので、定かではありませんが・・)今回の韓国版はオリジナル演出でした。といっても、ある程度David Leveaux版を念頭に置いた感じの演出でしたが。CarlaのA Call From the Vatican などは、 Leveaux版とほぼ同様でした。舞台装置も、Leveaux版とはだいぶ趣きが違いましたが、舞台両脇に階段があるところなどはLeveaux版を意識してのことなのかな?
日本のLeveaux版、装置や舞台の雰囲気が良かったこと、大浦みずきさんのLilianeのソロのシーンがなかなか良かったこと、2幕の後半のルイザのソロが良かったこと、Our lady of the spaが浮世離れした美しさで印象的だったことは記憶しているのですが、実は細かい部分はかなり忘れてしまっています。が、黒っぽいシンプルな装置で、舞台両端に螺旋階段があって、ブルーっぽい照明が基調だったように記憶しています。
David Swan版の装置は、ゴールドを基調にしていて、Leveaux版よりやや華やかな感じ、かな。最初のほうのシーンのセットはこんな感じ。
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マルグリッド風の絵などがかかっていましたね。冒頭のOverture Delle Donneは、こんな感じです。
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後ろのほうの円形の鏡の後ろにOur lady of the spaが登場していました。で、スパの由来とかを話すセリフを彼女が言うと、このセットからスパのセットに転換。中央に宝塚の大階段風(?)の大きめの階段、舞台両脇にも階段がありました。あと、舞台前方に「銀橋」が設置されていまして、Folies Bergeresなどでこれが活用されていました。
The Grand Canal で、最終的にこういうセットになります。
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(写真はアンコールの時の画像です)。Grand Canal の場面では、この舞台後ろの3美神の背景に、水が流れていました。
衣装は、女性アンサンブルたちは、マリー・クワント風やら、モンドリアンの絵(←で、いいんでしたっけ?)っぽい柄のドレスで、60年代風にしていましたね。

「ナイン」のBW初演版のCD,確か高校のころに購入していまして、私がミュージカルに嵌りはじめた初期のころに聞いていた作品の一つなんです。なんで、内容的にはそれほど好きな作品では無いのですが(嫌いでもないですけど)、なんとなく思い入れがあります。
この作品、Leveaux版を超えるのは難しいでしょうし、歌の上手さ以上に、主人公はもとより女性キャラクターを演じる俳優さんたちが役に合うかどうか、個性が出ているかどうか、が重要なように思われたので(あ~、あの、韓国の舞台、歌はたいていとても上手なのですが、こと女優さんに関しては、皆さん美しいのは美しいのですが、”個性”があまり出ていないことが多いように感じるんです。男性俳優さんたちは、ルックスも結構てんでんばらばらで、個性豊かで覚えやすいんですが・・)、さほど期待せずに見に行ったのですが、主人公のグイド役を演じたファン・ジョンミンさんの好演が光っており、予想したよりも良い舞台になっていまして、嬉しい驚きでした。 
ですが、帰国後、韓国のマスコミの劇評を2,3個検索して読んだところ、結構厳しい劇評でした。グイド役の造形に関して、けっこう辛口のコメントというか、「男性美に欠ける。あれで女性にモテるとは思えない」みたいな内容が書いてあった記事もありまして、やはり国によってモテやすい男性のタイプもちょっと違うってことなのかな~と、興味深かったです。
この作品って、いわゆるmidlife crisis=中年の危機、みたいなものを取り扱っているし、ややわかりにくい部分もあるように思うので、確かに万人受けする作品ではないですよね。日本より年齢層が若いように見える韓国の一般の観客にウケるのかは不明、というか、心配しちゃうところですが・・。私はこの韓国版は、なかなか良かったと思いますよ。
女性アンサンブルの振付に、若干野暮ったい部分があるのが、ちょっと気になりましたけどね。
あと、Liliane La Fleurのダンスが大浦さんぐらい上手だったら良かったんだけどなあ・・。

Guido役の황정민<ファン・ジョンミン>さん、とても良かったです。拍手!とにかく、雰囲気が役に合っていました。40歳だけど精神年齢9歳、というキャラクターが非常に似合っていました。表情が豊かで、winning smileって言うのかな、そんな感じの笑顔をお持ちで、とにかく”チャーミング”、なんですよね。女性がいっぱい寄ってくるのもなるほどな、と納得できますし、その寄ってくる女性たちを上手く器用に捌けているとは言えないのも納得できるし、しょうがない奴なんだけど、でも決して憎めない人物、という雰囲気のGuidoでした。Overture Delle Donne、Guidoが指揮棒を持って歌っている女性たちを指揮する、という演出で、その途中あたりで、グイドがとても幸せそうというかご満悦の表情で後ろ向きに女性たちに倒れこむシーンがありますが、このあたりのなんとも幸せそうな表情とか、Guido's Songの「Guido、Guido、Guido・・」という歌詞の部分で、中央の階段をひょいひょい、と軽やかに上りながら女性たちの手を触っていく場面などが印象的でした。
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ルイザに何か頼みごとをしたときか何かに、犬のマネ?なのか、膝を着いた姿勢で両手を顔の前に「お手」みたいな感じで揃えている場面がありましたが、こういうのが似合いますね(ちなみに、近くの女性観客がこのシーンで文字通り悶絶していました)。
Folies Bergeresのシーンで、銀橋に置いた箱から、グイドがリリアンが使う長~い長~いショール?みたいなものを取り出すシーンがあるのですが、その時に、取り出しながら前方の観客に向かって、いたずらっぽく目くばせしたりしていました。さすがスター。人をそらさぬ魅力があります。
歌も結構上手でした。映画スターとはいえ、もとはミュージカル俳優からスタートした方らしいので、当たり前なのかしれませんけど。Raúl JuliáやAntonio Banderasの歌と印象が似ています。上手いはうまいが、「歌」としてはさらに上手な人がたくさん存在するでしょう。ですが、「Guido」としては申し分なし、だと思います。今までCDで聞いていたRaúl JuliáやAntonio Banderasなど、歴代のグイドもバリバリに上手い歌い手というわけでは無いので、ジョンミンさんの歌もあれで良いんだと思います。あ、別所さんよりはずっと歌そのものも上手ですよ。声自体もなかなか良いです。The Grand Canalの劇中劇(映画?)の、バロックオペラ?風の曲の部分なども結構美しく歌っていました。
歌もOKでしたが、ジョンミンさんの場合はとにかく芝居のよさを特記すべきでしょうね。前半の無邪気な感じもいいのですが、Ti Voglio Bene/Be Italianの前、聖職者とグイドの一人二役の場面も傑作でしたし、The Bells of St. Sebastian、痛み、みたいなものが観客に伝わってきて、大変良かったです。表現力ありますね。 また、The Grand Canal以降、映画製作に取り掛かってからの演技も良かったですね。こう、映画だけに猛烈に集中してしまって周りが見えなくなっている感じ、というか。それまでのチャーミングな雰囲気から、芸術至上主義の猛烈な芸術家、という雰囲気に変わります。熱に浮かされたように映画製作に熱中している感じを上手に演じていらっしゃいました。
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夫と離婚した、と喜び勇んで伝えに来たCarlaに、ルイザと離婚する気はないよ、何バカなこと言ってるんだ?みたいなことを言ってしまう場面の演技も良いですね。映画制作に夢中になっているあまり心ここにあらず、という感じでCarlaに何の配慮も無くぐさっと本心を言ってしまうわけですが(←そういうシーンだったんですよね?なにしろセリフを完全に理解している訳ではないので・・)、そのあたりの芝居が上手ですね。この後、ルイザとの実生活での一場面を映画にしてしまうシーン、思わずルイザのメガネをとってルイザを演じるクラウディアにメガネをかけさせてまう場面、ルイザが激怒して立ち去った後にも撮影続行して、最後に「Cut,print!」という場面なども、印象的でした。このあたりのシーンでは、前半と比べるとほんの少し発声が不安定な感じの部分がありましたが、それが逆にグイドの混乱とマッチしていて、かえって効果的でしたね。
「スター」の出演、ということで、どうなんだろう??とちょっと不安も抱きながらの観劇だったのですが、全く問題なしでした。

~続く~
by saffy114 | 2008-02-13 23:19 | Korean Musicals